建物内の閉鎖された室内では二酸化炭素濃度が上昇しやすいため、適切な管理が必要です。
しかし、二酸化炭素濃度は高いものの、「原因がわからない」「どのような対策ができるかわからない」という方もいらっしゃるかと思います。
この記事では、室内の二酸化炭素濃度が上昇する理由と基準、二酸化炭素濃度を下げる対策方法(換気対策)と、二酸化炭素濃度上昇時の換気対策の注意点を纏めております。快適かつ健康的な室内環境を実現するために是非お役立てください。
目 次
・室内環境と二酸化炭素濃度が上がる理由・二酸化炭素濃度の基準と下げる方法(換気対策)
・二酸化炭素濃度の換気対策の注意点
・まとめ:二酸化炭素濃度の上昇は換気不足。早急な専門家への相談と対応を!
室内環境と二酸化炭素濃度が上がる理由
室内環境における二酸化炭素濃度とは
なぜ室内の二酸化炭素濃度が重要なのでしょうか。
私たちの生活空間である室内環境は、常に安全且つ快適であることが求められます。その中でも二酸化炭素濃度は、室内の空気質を示す重要な指標です。人は呼吸とともに酸素を取り込み、二酸化炭素を排出します。多くの人が長時間を過ごす室内では、この二酸化炭素が時間経過と共に増加していく問題があります。適切な二酸化炭素濃度を保つことは、健康だけでなく快適な生活を送るためにも重要な要素になります。
CO2上昇による人体へのリスクの詳細はこちら⇒関連記事『室内空気汚染とは?換気による事前対策の重要性を解説』
二酸化炭素濃度が上がる理由
二酸化炭素濃度が上がる原因としては以下の内容が考えられます。
●換気が停止している
換気設備を停止状態にしてしまっていることで、換気ができておらず二酸化炭素濃度が上がってしまう原因になります。
停止状態の原因としては、換気設備を設置されていることが知らなかったり、発停操作のオペレーションが共有されていなかったりと様々な理由が考えられます。
●換気設備の不具合等で換気できていない
換気のスイッチを操作していたにも関わらず、換気設備が故障により換気ができていないことも原因として考えられます。
換気設備の設置の仕方次第では故障の警報が表示されないこともあり、換気設備の消耗品の劣化等も含め、不具合に気づきにくい状況が多く見受けられます。
●石油ファンヒーター等暖房器具がある
石油ファンヒーターやガスコンロ等、建物内には二酸化炭素濃度を上げてしまう器具が設置されている場合があります。このような燃焼器具を使用すると二酸化炭素濃度が上がる原因となります。
●気密性が低く、空気が停滞している
現代の建物は気密性が高いですが、気密性が低い場合は、棚の配置や間取り、窓の配置によっては空気が上手く循環せず、部分的に空気が停滞・二酸化炭素が上がってしまう場合があります。
関連記事『空調換気設備の点検はどんなメリットがある?【興行法適用の施設】』
二酸化炭素濃度の基準と下げる方法(換気対策)
二酸化炭素濃度の基準
二酸化炭素濃度の単位にはppm(parts per millionの略)やパーセントが使用されます。これらは空気中の二酸化炭素が占める割合を表しており、いずれも安全基準の目安として利用されます。
二酸化炭素濃度が高まると健康リスクに影響してきます。
二酸化炭素の濃度が高くなると、頭痛や疲労感、集中力低下などを引き起こすことが明らかになっています。
このような健康被害は、すぐに環境を改善することで比較的重度になる前に回復する可能性が高いです。しかし、長期にわたって高濃度のCO2の室内に居続けると、認知機能の低下や肺機能の低下など、体へのダメージも大きくなるリスクがあります。
その為、室内の二酸化炭素濃度には一定の基準値が設けられており、基準値を超えないよう管理することが推奨されています。
大気中の二酸化炭素濃度は一般的に400ppm前後と言われており、室内の二酸化炭素濃度基準は1000ppm以下ととなります。
室内を1000ppm以下の適切な濃度を維持することで、健康リスクを最小限に抑えることができます。
二酸化炭素濃度を下げる換気対策
二酸化炭素濃度を下げる換気対策は大きく2つに分けることができます。
●換気扇による換気
換気扇は室内の高い二酸化炭素濃度を含む空気を効率良く外に排出し、新鮮な空気を取り込むのに役立ちます。特に、キッチンのガスコンロ等の燃焼器具により二酸化炭素が増えやすい場所では、積極的に換気扇を取り入れることが推奨されます。使用する際には、二酸化炭素の発生源に見合った適正な換気扇の能力を設定し、空気が十分に循環する配置となるように設計致します。
よく住宅等で見受けられる24時間換気もこちらの換気に該当します。
●窓開け換気
窓開け換気は自然換気とも呼ばれ、窓を開放して自然の風の流れを利用した換気であり、電力を消費せずに行うことが可能です。しかし、外の気候条件や建物の設計や配置等の外部要因に大きく左右される為、安定した換気量を得ることはできません。一方で、先程の紹介した換気扇を使用した換気は強制換気とも呼ばれ、換気扇などの換気設備よって強制的に空気を入れ替えます。デメリットとしてはエネルギー消費が伴います。
効率的な換気を目指すには、これらの換気方法を状況に応じて適切に使い分けることが重要です。例えば、外気温が低い冬場や湿度が高い日には、自然換気のみでは効果が限られるため、強制換気を併用して室内の空気を入れ替えることが望ましいでしょう。
関連記事『機械換気と自然換気の換気種類を解説【第1種換気とは|第2種・第3種の違い】』
二酸化炭素濃度の換気対策の注意点
換気対策をしながら省エネを行う
【換気の適正回数】
室内の空気を健康に保つためには、どのくらいの頻度で換気を行うべきか、また一回の換気にどの程度の時間が必要かを知ることが重要です。建物の構造や人の密度、活動の内容に応じて換気の必要性は変動するため、それぞれの条件に最適化した換気計画を立てることが求められます。さらに、換気は外気の空気を取り入れる為、換気しすぎると空調・エアコンが効かなくなってしまう可能性があり、電気代が上がってしまう要因にもなります。空調と換気量のバランスを考慮しながら適正な換気回数で換気を行うことも重要です。
また換気により電気代上昇を抑える為には、全熱交換器を活用することもお勧め致します。
関連記事『全熱交換器の知っておくべき基礎知識|仕組みと種類、メリットと費用』
関連記事『換気量の単位・計算の仕方を解説|必要換気量・換気回数の計算例』
【CO2センサーで必要なタイミングでの換気を実施】
室内における二酸化炭素濃度をCO2センサーにより管理する上で、室内空気質の継続的かつリアルタイムでの監視が可能になります。これにより、適切なタイミングに換気を行うことで室内の空気環境を良好に保ちつつ、過不足なく換気できることで、エネルギーの使用効率を高め、電気エネルギー負担を軽減することができます。
センサーを使用した空気質の監視と管理は、特に公共施設やオフィスビルなど多くの人が集まる場所において重要です。CO2センサーは、不特定多数の人の呼吸によって増える室内の二酸化炭素濃度を測定することで、施設内の人に合わせた換気を行うことができます。
換気をしてもCo2濃度が下がらない場合
換気設備が設置・使用しているにも関わらず、CO2濃度が下がらない場合、いくつかの原因が考えられます。
①換気設備の不具合
換気設備に不具合が生じており、想定していた換気ができていない可能性があります。
②必要換気量の不足
換気設備としては問題なく運転できているものの、必要換気量に対して能力不足の換気設備が導入されている場合や換気設備以外の部分で不具合が生じることでも、二酸化炭素濃度が下がらない原因となります。
③改装や室内用途変更
建物を建てた当時と異なる室内の使用用途であったり、改装により燃焼器具の増加や間仕切りの変更なども二酸化炭素濃度が下がらない原因となります。
実際に二酸化炭素濃度が下がらない場合は、多面的な検証が必要なため、専門家に相談することをお勧め致します。
関連記事『換気調査とは。解決できる課題と実例|室圧・換気不足・高湿度で悩む方』
まとめ:二酸化炭素濃度の上昇は換気不足。早急な専門家への相談と対応を!
室内の二酸化炭素濃度がなぜ上がってしまうのか、二酸化炭素濃度の基準と下げる対策はご理解いただけたでしょうか。
実際に、二酸化炭素濃度は換気ができているかの指標として様々な場所で活用されています。
人体への健康被害をもたらす可能性があるものの、目に見えない物質な為、対策は慎重に行う必要があります。
換気対策を気にされている方は是非建物を確認する上で、ご参考にしてみてください。
改善が見られない、原因もわからないという方は専門家への相談をお勧め致します。
是非下記よりお問い合せください。
普段は換気・全熱交換器に関わる工事、他には劇場関係の空調換気設備の修繕・保守を担当しております。
他にない換気・空調に関する情報をわかりやすく発信していきます。
●菱熱工業株式会社 社員
●開発商品(全熱交換器)の新聞社掲載情報(日本経済新聞社、月間HACCP、日刊工業新聞社)
●主な仕事内容:空調更新工事・保守メンテナンス・換気改善提案
●設備工事の妥当性を見極めるには、ある程度の設備知識が必要です。そんな知識を提供してより良い設備の保守・工事のご参考にしていただけますと幸いです。