全熱交換器の知っておくべき基礎知識|仕組みと種類、メリットと費用

全熱交換器という換気設備を耳にされた方も多いと思います。全熱交換器とは何か、仕組みや構造、種類、メリット、費用に関して幅広く説明しております。

全熱交換器をご検討されている方、全熱交換器について広く知りたい方にお勧めです。

この記事では全熱交換器を導入する前に知っておくべき基礎知識をまとめており、本当に全熱交換器が必要かの判断にお役立ていただけます。

   

全熱交換器とは

換気機器(換気扇)との違い

換気機器とは、室内の空気を屋外と入れ替える換気を行う目的の機器全般のことを指します。その換気機器を更に細かく種類分けしていくと、「換気扇」「全熱交換器」などの様々な種類に分けることができます。

換気機器を換気方式の種類の説明はこちら『第一種換気とは』



では「換気扇」と「全熱交換器」は何が違うのでしょうか。
・換気扇…換気は室内の汚染空気(二酸化炭素、熱気、蒸気、煙、臭い、埃)を排出し、人の呼吸維持・健康維持に必要な屋外の新鮮な空気を取り入れる目的で行われています。
換気扇はその為の室内の空気を屋外へ排出する、もしくは屋外の空気を室内に送り込む動力の役割を担っております。
・全熱交換器…換気扇の役割を担いつつ、プラスαで省エネの付加価値がついた換気設備になります。捨てられる空気の熱エネルギーを再利用することで省エネ効果が期待されています。

換気扇と全熱交換器は大きな差はなく、全熱交換器の方が地球に配慮した仕様になっているイメージです。
記事『全熱交換器とロスナイ、空調機との違いを解説』

全熱交換器の構造

全熱交換器の構造はどのようになっているのでしょうか。

全熱交換器は他の換気設備同様に室内に空気を送り込む給気ファン、屋外へ空気を排出する排気ファンが搭載されています。
全熱交換器の独自の構造としては、熱交換エレメントが全熱交換器内の空気の通り道に搭載されているところです。
熱交換エレメントは特殊な板を重ねて構成されたエレメントでして、そこに排出する空気を通すことで熱エネルギー(温度と湿度)を取り出し、その熱エネルギーはエレメントを通して給気する空気に移し替えることができます。

※全熱交換器と似た換気設備として顕熱交換器があります。全熱交換器で再利用する熱エネルギーの温度・湿度の内、温度のみを再利用することができます。
湿度はそのまま排出することができますので、室内の湿度の高い屋内プール等に適しています。

全熱交換器の効果と種類

全熱交換器のメリットと仕組み

全熱交換器の大きなメリットとしては、大きく2つあります。
①省エネ
通常の換気設備と比較して、換気しながら冷暖房維持費用を削減することができます。
換気では排出してしまう熱を回収して再利用するため、エアコンやストーブ等の空調のエネルギー費用を抑えることができ、省エネになります。
②快適空間
換気により室内に送り込まれる外の空気を、排出される空気の熱を再利用することで、より快適な温湿度に近づけて給気することができます。
換気によって室内が寒くなったり、暑くなったりすることを軽減することができます。

全熱交換器のメリットの詳細とデメリットとは

全熱交換器のお勧めの設置条件とは


では実際にはどのような仕組みなのでしょうか。
夏の場合(例:外気温度33℃、室内温度26℃)で見てみましょう。
●通常の換気機器の場合
換気により室内の26℃の空気を換気機器により屋外に捨ててしまいます。また捨てた分の空気を外から送り込む必要があり、33℃の外気が室内に送り込まれます。
折角エアコンで冷たくした空気を外に捨て、暑い外気を取り込んでしまい、室温が上がりやすく、且つエアコンが取り入れた外気を冷やす分、更に働かなければなりません。

●全熱交換器の場合
換気により室内の26℃の空気を全熱交換器により屋外に捨てる際に、熱エネルギーの回収を行います。回収したエネルギーを室内に送り込まれる33℃の外気に移し替えることで、実際の給気される温度が33℃より低い温度で送り込まれます。
通常換気機器よりも室温が上がりにくく、結果エアコンの冷房機能への負荷を下げることができ、エアコンの電気代の節約が期待されます。
前述したように換気は室内の汚染空気(二酸化炭素、熱気、蒸気、煙、臭い、埃)を排出し、人の呼吸維持・健康維持に必要な屋外の新鮮な空気を取り入れる目的で行われています。
しかし換気には、空気の汚れに関係のない熱エネルギーも同時捨てなければならないのが常でした。そこで換気の「汚染空気を捨て、新鮮な空気を取り入れる」目的を果たしつつ、熱エネルギーを無駄にしないように作られたのが、全熱交換器です。
全熱交換器では排出する空気から熱エネルギーを回収するだけで、汚染空気そのものは屋外に捨てられています。もちろん、給気される空気も屋外から取入れられた新鮮な空気です。

全熱交換器の種類と選び方

では全熱交換器にはどのような種類があるのでしょうか。
大きく2つに分類することができます。
①静止型全熱交換器
名前の通り全熱交換器のエレメントが固定式のものになります。エレメントは特殊加工紙で作られたフィンと仕切り板を積み重ねた構造となっており、給気と排気の通路が完全に分けられた直交流方式になります。小型の全熱交換器はこちらの静止型のものが多いです。
また特殊加工紙の熱伝達・熱伝導の性質を利用しており、透過式エレメントを通して全熱の交換が行われます。

※ロスナイとは
全熱交換器について調べていくうちに「ロスナイ」という言葉を見た方もいらっしゃるかもしれません。ロスナイとは、三菱電機製の全熱交換器の商品名になります。全熱交換器をロスナイという方もいらっしゃるので注意が必要です。
ちなみにロスナイは静止型全熱交換器です。

②回転型全熱交換器
エレメント部分がモーターにより回転させて全熱交換を行う回転式のものになります。
エレメントは吸湿材を含ませたクラフト紙等をハニカム状に形成した構造になっています。回転させたハニカム状の空気の通路に排気・給気を流す為、給気と排気が同じ空気の通路を交互に通ります。大容量の製品のみで、小型の全熱交換器にはこの方式はござません。
また静止型が熱伝達・熱伝導の性質であるのに対し、回転型はクラフト紙の蓄熱と放出の性質を利用しており、蓄熱蓄湿方式エレメントを通して全熱の交換が行われます。

●全熱交換器の選ぶ方法
静止型・回転型どちらにしても、まず換気機器を選ぶ際には必要な換気量を知ることから始まります。その上で設置したい場所を決め、ダクトの経路・電源はあるか・圧力損失を計算して、最後に機器(全熱交換器)の選定を行います。
全熱交換器の選定できれば全熱交換の効率の指数である交換効率がわかり、且つ室内温湿度・外気温湿度の状態が分かっていれば、全熱交換器を通過して供給される空気の温湿度も求めることもできます。

推奨換気量の解説はこちら「ビル管理法・建築基準法」

換気設備の能力とは何かを解説

換気量の計算の仕方はこちら

換気を後付けする際の選ぶポイントはこちら

全熱交換器に関わる費用

確認すべき費用項目

全熱交換器を導入する際に、確認すべき費用に関して説明致します。
①電気代
全熱交換器を導入するとランニングコストとして電気代が発生します。
しかし、既に換気設備が設置されている場合も同じくランニングコストが常に発生しています。その中全熱交換器に交換することで、熱交換した分エアコンの電気代を節約することができます。全熱交換器を導入した際に、どのくらいエアコンの電気代が節約できるのか、それを予め確認しておくことは重要です。

②メンテナンス
全熱交換器は設備機器なので、定期的なお手入れ・メンテナンスが必要です。
具体的には、フィルター清掃・エレメント清掃が定期的に必要です。機械内部にある部材の為、専門業者にお願いすることを推奨しております。
全熱交換器は冷媒を使用されていないものに関して、フロン排出抑制法における点検義務はございません。しかし、不具合にいち早く気づく為には定期的な点検をお勧め致します。
記事『全熱交換器のメンテナンス方法とは』

③工事費
こちらは設置場所・条件によって大きく金額が異なるところがポイントです。全熱交換器を導入する際には、専門業者による工事が必要です。電源の工事、機器を設置・固定する為の工事、風の通り道のダクト工事、保温工事等の様々な工事が必要になります。
こちらはダクトの長さ、ルート等の様々な条件によって費用が変わってきます。専門業者が現地を見ないと費用が出ないのが難点です。

居室使用にお勧めの代表的な全熱交換器メーカー

全熱交換器の工事費用の例

全熱交換器を導入する際の工事の詳細を見ていきましょう。
ざっくりと4つの工事に分けることができます。

①機器の設置工事(据付)
機器は振動するための、その振動対策と建物に固定しなければなりません。全熱交換器は床面に固定、もしくは天井から吊り下げての固定等、設置の仕方は現場により異なり、その設置費用が発生致します。
また小型の全熱交換器は心配いりませんが、全熱交換器のサイズが大きく扉が通らない、一人では運べない重量の場合、設置場所に全熱交換器を運ぶ為の搬入費用が別途発生してしまう可能性があるので注意が必要です。

②ダクト工事
ダクトは鉄板でできた風の通り道です。換気するためには、室内から屋外へ正確に風の通り道を作らなければなりません。その通り道を作るのがダクト工事です。ダクトの大きさや長さによって金額が変動し、空気を屋外に捨てる為の穴を建物に開ける費用が発生することもあります。
既に全熱交換器が設置されている場合は、ダクトを繋ぎかえる工事のみになりますので、比較的ダクト工事の費用は抑えることができます。

③電気・電源工事
全熱交換器を運転させる電源が必要になります。予備電源があるのか、電源から機器設置場所までの距離はどのくらいかによって、工事費が左右されます。こちらも専門業者による工事が必要になります。

④保温工事
先程のダクトに結露を防止するための保温材を巻く必要がある場合があります。その際にはダクトの長さに合わせた保温材が必要となり、巻く工事が必要となります。

まとめ

全熱交換器の仕組み・構造、種類とメリットはご理解いただけたでしょうか。
導入する前に省エネでどこまでエネルギー費用を削減できるのか、導入する際の導入費用を予め確認することが重要です。
もちろん、前述したように正確な費用は現地を確認しないと正確に算出はできませんので注意が必要です。
また工事が発生しない全熱交換器も増えてきました。工事が発生しない分、費用を抑えられ導入費用の見込みが立てやすくなります。
是非そちらもご検討ください。

作者名
設備
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