食品を扱う現場では食品廃棄物を発生し、廃棄費用の負担が大きくなってしまうこともあります。
また食品廃棄物とは別に食品を扱う上での、臭気・害虫の管理に悩まされている方々のお話も多くお聞きします。
この2つの問題を食品廃棄物を再利用することで解決できます。
害虫の殺虫剤抵抗性は一定ではありません。
害虫×殺虫剤の組み合わせを16,570件調査した結果報告があります。
これによると3~4年経過で害虫は抵抗性を上げる進化を遂げていることが分かっています。
殺虫剤の新剤開発は限界を迎えており、害虫の進化に人が対応していなかなければなりません。
こちらの記事では、食品工場における害虫の基礎知識、コーヒー粕再利用の効能、食品工場におけるコーヒー粕の再利用の例を紹介しております。
食品廃棄物の再利用と害虫
食品工場における害虫の基礎知識
食品工場の害虫は様々な種類がおり、それぞれ特徴があります。
① タンパク質を好む虫
チャタテ虫 体長1㎜程 常温+湿度70%以上で大量発生する。
シバンムシ 体長2㎜程 常温+湿度70%以上を好む
コナダニ 体長0.4㎜程 常温+70%湿度以上を好む
② 蠅類
ショウジョウバエ 体長2㎜程 好物はアルコール、発酵食品
ノミバエ 体長2㎜程 好物は傷んだ野菜・果物類
キノコバエ 体長2㎜程 好物はキノコ類
チョウバエ 体長5㎜程 好物は油、石鹸カス
③ 歩行虫
黒ゴキブリ 屋外に巣を持つ 雑食だがアルコール類と香辛料を好む
チャバネG コールドテーブル、石膏ボード内にコロニーを作る
クモ類 コバエやチャバネGを餌とする
※チャバネGは特に酵母・ぬか・ビーフエキス・胡麻油を好む性質を持つ。
上記の害虫はいずれも繁殖力が高く耐薬品性を有しており、現在は殺虫剤等の散布で一時的な予防がなされているが絶対数を減少させるには至らないのが現状である。
捕殺や人体に有害な薬品利用による一時的な害虫除去ではなく、そもそも侵入してくる害虫数を減らす方法を以下に説明します。
コーヒーかすの効能とは
①抗酸化作用
カビやコケは植物です。なので生き抜く或いは繁殖するために窒素が不可欠なんです。
なので窒素飢餓の状態にすれば繁殖できず死滅していきます。
カビやコケは水分とタンパク質で増殖しますよね。
コーヒーカスに含まれるポリフェノールとカフェインは窒素の急速な有機化を促します。
②消臭効果
一般的な炭やゼオライトなど多孔質の形状のものが有名ですが廃棄するのはちょっとお金が掛かりすぎます。
そこで【もみ殻】です。
コーヒーカスは弱酸性でフェノール基を有しています。
つまり、悪臭(主にアンモニア臭)の消臭、脱臭に大きな効果が期待できます。
アンモニア臭は主に動物性タンパク質から発生します。
生ゴミ庫やコンポジットに利用することができ、消臭効果は2~3週間で活性炭の約5倍の効果です。
食品工場におけるコーヒー粕再利用の例
例1「貯蔵庫の対策」
穀物・米・調味料・野菜冷蔵庫・肉冷蔵庫などの場合
① 害虫が好まない環境にする。
先に述べた通り概ね湿度70%が害虫の好む室環境となります。
全体を空調管理するには多大な費用が継続的に必要となりますので限定的な
処置が必要です。
「コーヒーもみ殻」「乾燥したコーヒーかす」を利用しましょう。
コーヒーかすに多分に含まれるカフェインとポリフェノールは余分な水分と臭気を吸収します。
後に述べますが上記の成分は増殖を抑制します。
コケやカビは害虫の産卵場所になりますので、水分と臭気の除去で住処となり得る場所を減らしコロニー形成を抑え込むことが必要です。
不織布に1㎏程/1坪のコーヒーかすを入れて原料付近に配置しましょう。
コーヒーの香りが漂いますがこれも害虫の侵入忌避に大いに役立ちます。
効果は2週間ほどです。
使用済のコーヒーかすをコンポジットに入れると発酵し、食品残渣の減容にも利用が可能です。
ナメクジ、カメムシ、ハダニなどの害虫駆除として農作物貯蔵庫に利用されていることは広く知られています。
例2「食品加工室の対策」
下処理室、洗浄室、調味料室、加熱室、トッピング室などの場合
ウェットエリアでは排水溝付近の悪性を防ぐ効果があります。
コーヒーかすには弱酸性の性質があり靴底洗浄水に利用される高価な洗浄水の代替品として利用することができます。
また、カフェインは排水溝付近や巾木付近に住みつき繁殖する害虫の忌避効果があります。
ゴキブリにとって苦手と言われるエチルフェノール成分をコーヒーが含んでいるため、長期的な利用でゴキブリや害虫のコロニー排除が期待されます。
ドライエリアでは局所的な除湿と消臭で害虫の忌避が期待できます。
特にカフェインは食品工場内に侵入する害虫が嫌がるに臭い成分である為、侵入する害虫の絶対数を減少させます。
加えてタンパク臭の消臭効果もあるため、外部から虫を寄せにくくします。
パンの加工場においては金属を腐食させるイースト菌を吸着させ、空調機器や生産機器のメンテナンス頻度を減らす効果があります。
ウェットエリアにおいては工業用洗剤の代用品、ドライエリアにおいては消臭と忌避及び腐食防止用として活用さることをお勧めします。
例3「油汚れを取り除く方法」
フライヤーやロータリーシェフ等を利用する調理室は頑固な油汚れが床に付着しています。
これらは通常の洗浄工程として次亜塩素散水を洗浄後に床に流すなどで対策されていますが、従業員の転倒事故やこれに伴う薬品やけどの事故発生事例が後を絶ちません。
加えて防滑処理を施した塗床では工業用洗剤を多量に使用するなど、除害施設に多大な
負荷を加えてしまい水処理にかかる費用が増大する傾向があります。
コーヒーかすは多孔性かつ弱酸性のフェノール基を持つ化合物です。
これは市販の活性炭に比べアンモニア臭では5倍以上の消臭効果を発揮します。
工業用洗剤の代わりにコーヒーかすを利用することは従業員の安全を守ること、また
ランニングコスト低減に役立つ手段です。
例4「屋上室外機置場の対策」
肉や魚を焼いたときに発生する排気ガスは害虫やカビ、コケにとって栄養価の高い養分となります。
そこで発生・増殖した虫の幼虫は簡単に室内に侵入してきます。
また、カビ菌は風に乗り付近の住宅の外壁や洗濯物・車等に付着し繁殖するため大きなクレームとなっています。
これらの対応のため各事業所毎に予算を組み対処していることは周知の事実です。
この事案については間欠式噴霧器でコーヒー水を発生源付近に定期的に撒くことで費用の削減が見込まれます。
未発酵のコーヒーかすは植物の生育に欠かすことができない三大要素の一つ『窒素』を急速に有機化する作用があります。
十分な窒素を吸収できないカビやコケは窒素飢餓状態となり朽ち果てていきます。
有毒な除草剤で対応せずともコケやカビの増殖を抑制することが可能なのです。
【まとめ】食品再利用で人と環境に配慮した工夫をしましょう。
これまで述べた通り搾りかすのコーヒーには利用価値の高い成分が存分に含まれています。
大手のコーヒーショップでは15㎏/店舗あたりの廃棄は毎日のように発生し捨てています。
企業単位では25t/日をお金を払って捨てていることになります。
コーヒーかすに少しばかりの加工を加え、食品工場で利用することはSDGsさながらのサイクルを生み出すことになります。
局所の除湿とコーヒーかすを合わせて活用することで生産室の環境を改善し、外注への経費削減とランニングコストの低減を試みてはいかがでしょう!