建物の各部屋には室間差圧という部屋ごとに圧力差をつけることがあります。
室間差圧は室内環境維持の為に重要な概念なり、滅菌室やクリーンルーム等で必須な要素となっています。
こちらの室間差圧とは何か、室間差圧の仕組みとメリット、必要な環境、室間差圧の測定と基準について解説しております。
食品工場等の高い空気洗浄度が求められる各産業の工場や病院等で、お悩みの方は是非ご参考にしてください。
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室圧計画・エアバランス崩れでお悩みの方へ
適切なエアバランス・室圧のコントロールは、室内空間の清浄度を維持し、快適な空間作りに重要な要素です。当社では工場やオフィス、劇場での室圧計画・エアバランス崩れの調査・処置を強みとしております。室圧コンサル、エアバランス崩れにお困りの方は是非下記よりご相談ください。
室間差圧とは
室間差圧とは?仕組みを解説
室間差圧とは、部屋と部屋との間に生じる気圧の差のことを指します。この室間差圧は、特に空気清浄度が求められる場所、例えばクリーンルームや滅菌室などで重要な役割を果たします。具体的には、室間差圧を利用することにより、室内空気の流れをコントロールし、外部からの不純物の侵入を防いだり、室内の空気品質を一定に維持したりすることが可能となります。また、室間差圧のコントロールには、空調換気設備が重要であり、空調換気設備を管理することで適切な室間差圧を維持することが可能となります。
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室間差圧の仕組みを解説していきます。室間差圧とは一部屋と隣の部屋との間に生じる気圧差を指す言葉で、その一部屋の圧力の値が強ければ、その部屋は周囲の部屋に比べて高圧、逆に圧力が弱ければであれば低圧となっています。高圧のお部屋は圧力により部屋の外に空気が流れ出やすく、低圧の部屋は圧力により外からの空気を吸い込みやすくなります。この室間差圧をうまく利用し、空気の流れを通路などに向かわせることで、外部からの塵や不純物が部屋に侵入するのを防ぎます。また、室間差圧の値が大きければ大きいほど、空気は差圧の大きな部屋から小さい部屋へと流れていくのです。この圧力差を生み出すのが空調換気設備となります。
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室間差圧のメリットと必要な環境
室間差圧を利用することでのメリットは数多くあります。最も大きなメリットは、クリーンな空気状態を維持し外部からの不純物の侵入を防ぐことができる点です。これにより、科学実験室や製薬工場、半導体製造工場、病院、食品工場などで必要とされる無菌や無塵状態を保つことができます。また、設置された室間差圧によって、部屋と部屋の間に生じる空気の流れをコントロールすることも可能となり、これにより空気清浄度や湿度、温度なども調整することができます。差圧の大きさによっては、特定の部屋に空気が流れ込み過ぎないようにすることも可能となります。
室間差圧が特に必要となる環境は、無菌や無塵を維持することが求められる場所ではあります。例えば、前述したような科学の研究室や製薬工場では、細菌やダストなどの不純物が研究や製造工程を阻害する可能性があります。このような場所では、室間差圧を利用して空気の流れを制御し、外部から不要な物質が侵入するのを防ぎます。また、病院の手術室などでも、室間差圧はとても重要となります。ここでは、細菌やウイルスなどが患者に感染するのを防ぐために、しっかりとした差圧管理が求められるのです。このように空気の中に含まれる埃や粉塵、細菌などを部屋に侵入させない環境では必須となります。
室間差圧による室内環境維持と差圧の測定と基準
空気中の異物と室間差圧による室内環境適正化
人が介在する部屋の空気には、様々な異物が含まれています。
生活する上で発生してしまう埃・二酸化炭素、油煙、臭気、湿気が目には見えないもの空気中に含まれています。
また状況によっては人の咳から細菌やウイルスが空気中に漂ってしまう場合もあります。
このような環境は、人を介在させながら安定した品質を保つ為に衛生な環境が必要な工場や病院などでは衛生的に保つ対策が必須となります。
その為には、空気中の異物を除去するだけでなく、侵入させない対策が重要となります。
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空気中の異物を侵入させない方法として、室間差圧は一つの大きな役割を果たしています。室間差圧が一定に保たれていると、各部屋ごとに必要のない空気の侵入を防ぐことができ、適正な室内環境が保たれやすくなります。先程の工場や病院内の空気清浄度が求められる特定の部屋、例えばクリーンルームや滅菌室などでは、この室間差圧の設定がきちんとされていることが重要になるのです。高い空気洗浄度が求められる部屋では、トラブル予防の為に適切な室間差圧となるような設計と定期的な空調換気設備のメンテナンス・点検が重要となります。
室間差圧の測定と基準
私たちが日常的に利用する施設や建物、特に滅菌室やクリーンルームといった特殊な空間では、その内部の空気状態をコントロールされていることが大半です。外部からの不純物や微生物、風または熱の侵入を遮断し、部屋の環境を一定に保つための室間差圧は重要な手段ですが、適切な差圧を維持するためにはその測定と調整が必要となります。
● 室間差圧の測定方法
室間差圧の測定は、適用される場所や目的により、専門的な知識と技術を必要とします。高度な精密度を要求される場所では、室間差圧計を用いて測定します。この差圧計はデジタル式とアナログ式があり、測定の精度や可視性により選びます。初期設定では、外部との差圧を0に設定し、その後、必要な差圧を作り出すために内部の空気圧を調整します。差圧計自体も定期的な校正を行うことで計器の精度を維持することが重要です。なお、測定の際は室内の換気状態や気温、湿度などを確認し、それらが影響を及ぼす可能性も考慮に入れる必要があります。
● 室間差圧の調整手順
室間差圧の調整は、測定結果を基に室内の空気圧を調節することで行います。この空気圧の調節は、空調換気設備、扉の開閉などにより行われます。空調換気設備の運転状況を調整することにより、室内の空気圧の変化を制御し、目指す室間差圧を作り出します。また、人の出入りや扉の開閉による空気の流れも差圧に影響を及ぼすため、これらの動的な変化も考慮に入れて調整を行う必要があります。
● 室間差圧管理における注意点
室間差圧管理においては、正確な測定と適切な調整が重要ですが、さらに注意すべき点があります。それは、室間差圧が安定して維持されるような環境を作り出すことです。換気装置や空調設備の性能だけでなく、建物の特性や周囲の環境条件も差圧に影響を及ぼすため、これらを理解した上での管理が必要です。さらには、人の出入りや機器の運転状況など、日々の運用における多様な状況変化に対しても柔軟に対応できるような運用体制を整えることが必要となります。これらにより、室間差圧を適切に管理し、その効果を最大限に発揮することが可能となるのです。
●室間差圧の適正値
クリーンルームや滅菌室など、特定の環境を維持する必要がある施設においては、室間差圧の管理が非常に重要な役割を果たしています。管理する上で適正値を設けることは重要でありますが、室間差圧の適正値とは何か、どのように設定すればよいのか、適正値維持には何が必要なのか、と悩まれる方もいるかと思います。こちらはそれぞれの環境により異なり、具体的な数値や方法は施設の用途や条件によって異なるので注意が必要です。不具合を生じてしまっている場合には、一度専門家へ相談することをお勧め致します。
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室間差圧と空調換気設備【減菌室とクリーンルーム】
室間差圧を生み出す空調換気設備の仕組み
滅菌室やクリーンルームといった特殊な環境では、外部からの汚染物質の侵入を抑え、また内部の浮遊微粒子を制御する為、室間差圧の制御が重要となります。そちらの制御には空調換気設備の役割が大きく重要な要素となっています。空調換気設備が全体の室間差圧を作り出し、適切に維持する上で、その仕組みや役割について理解を深めることで効果的な室圧管理が可能になるのです。ここでは、空調換気設備が如何にして室間差圧を作り出し維持するのか、また換気と室間差圧の関係性、そして空気流と室間差圧について、詳しく解説して参ります。
空調換気設備が室間差圧を生み出す重要な仕組みの一つが「給気」および「排気」の制御です。送風機等の給気設備は清浄な空気を供給し、排風機等の排気設備は汚れた空気を排出します。これらの制御により、部屋の空気を清潔に保つと同時に、部屋と部屋の間に圧力差を生じさせることが可能となるのです。空調換気設備による室間差圧制御はこの給気設備と排気設備のバランスを調節によって実現します。空調換気設備には空気の流れを常に一定に保つ役割があり、常に差圧コントロールが可能と言えます。ただし、これらの機能はそれぞれが独立して動作しているわけではなく、隣接する部屋との圧力差等、建物全体を総合的な関係や、各空調換気設備が確実に動作し、適切な室間差圧を確保し続ける仕組みが構築されています。
また空気流と室間差圧の関係は、空調換気設備の運用において極めて重要です。室間差圧を適切に管理することは、空気の流れをコントロールすることに直結しており、汚れた空気が清浄な部屋へ流入するのを防ぐことができます。こちらは部屋の圧力によって空気を吸い込みやすい、流れ出やすい等の性質を利用することでコントロールをしています。また、室間差圧の制御を通じて、空気の循環パターンを規定し、 空間全体の空気清浄度を向上させることができます。このような制御された空気流は、室間での微粒子の拡散を防止するのにも有効な手段であり、クリーンルームや滅菌室といった専門的な環境における空気品質管理には欠かせない要素でしょう。
室間差圧と防塵・クリーンルーム
室間差圧は、防塵やクリーンルームの清潔度を維持するために非常に重要な要素となるのです。部屋の間に圧力差をつけることで、空気の流れをコントロールすることができ、外部からの塵や微生物の侵入を防ぐことが可能となります。具体的に室間差圧が防塵やクリーンルームにどのような役割を果たすのかの例を紹介します。
【 室間差圧を利用した防塵の仕組み】
室間差圧を利用した防塵の仕組みは、部屋と部屋の間に気圧差を生じさせることで、空気の一方向の流れを生み出すことが基本となります。粉塵の侵入を防ぎたい部屋の圧力を高く保つことで室内の空気が外へ流れる力が強くなり、空気の流れを介して外部からの塵や微生物の侵入を防ぐことができるのです。具体的には、清潔な部屋から汚れている部屋へと空気が流れるように調節を行うことで可能になります。また、エアコンや換気扇などの空調換気設備も防塵環境の維持に大きな役割を果たします。これら空調設備は空気の流れをコントロールし、室間の気圧差を作り出すために存在します。ただし、室間差圧がきちんと機能するためには設備のメンテナンスが不可欠です。それは、フィルターの掃除や換気扇の調整など、定期的なチェックと手入れが必要であるからです。
また侵入してくる空気に対しては高性能のフィルターを搭載することで防ぐことも可能です。
関連記事『中性能フィルター購入時のポイント|中性能フィルターについて徹底解説』
【 クリーンルームにおける室間差圧の管理】
クリーンルームは、極めて少ない塵や微生物しか存在しない清潔な環境が求められる場所で、そこでの室間差圧の管理はおろかすことができません。クリーンルームでは、室間差圧を厳しく管理し、外部からの塵の侵入を防ぎます。また、清掃や清潔さの保持も細心の注意を払う必要があります。室間差圧の適切な管理により、クリーンルームの中には汚れた空気が流れ込まず、外部からの塵や微生物の侵入を防ぐことが必須となります。よって室間差圧を作り出す空調換気設備の定期的なメンテナンスや保全、バックアップ機の検討が大変重要となります。
一方、クリーンルームの扉を開閉するタイミングも室間差圧の管理に影響を与え、故に、扉の開閉は最小限にとどめ、急激な圧力変化を避けるようにしましょう。さらに、室間差圧を管理する上で、人々の出入りや活動も影響を与えるため、可能な限り環境変化を減らすことが重要です。
まとめ【室間差圧の測定と維持管理の重要性】
室間差圧の仕組みと空調換気設備との関係はご理解いただけたでしょうか。
室間差圧は部屋の用途に合わせた環境を維持するには、大変重要な要素になってきます。
トラブルを回避するには、室間差圧の定期的な測定と空調換気設備のメンテナンス・点検により、不具合の早期発見や予防保全に繋げることができます。
適正差圧の維持に重要なことは、適切な設定を行った後も継続的に適正値を絶えず維持し続けているか確認することです。空気は目に見えません。異物が混入してしまい大きな問題になってから気づくのでは遅すぎる場合が大半です。室間差圧は部屋の中の物質の流れを一定に保つため、そして外部からの不要な物質の侵入を防ぐために重要です。
室間差圧の測定や見直し、空調換気設備の点検・見直しに是非取り組んでみてください。
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普段は換気・全熱交換器に関わる工事、他には劇場関係の空調換気設備の修繕・保守を担当しております。
他にない換気・空調に関する情報をわかりやすく発信していきます。
●菱熱工業株式会社 社員
●開発商品(全熱交換器)の新聞社掲載情報(日本経済新聞社、月間HACCP、日刊工業新聞社)
●主な仕事内容:空調更新工事・保守メンテナンス・換気改善提案
●設備工事の妥当性を見極めるには、ある程度の設備知識が必要です。そんな知識を提供してより良い設備の保守・工事のご参考にしていただけますと幸いです。