電気代が上がり続ける今、省エネをお考えの方も多いと思います。
省エネにも電気・ガス・水道など様々な種類がございます。
今回は空調換気にピックアップをし、空調換気における省エネに関して説明しております。
省エネを行う際に好ましい設定温度や、省エネを計画する際に必要な観点をわかりやすくまとめております。
空調換気の省エネの基礎知識を載せておりますので、省エネがしたい、無駄なエネルギーは徹底的に省きたいという方は、
是非ご参考にしてください。
また大空間空調は温度を管理する空間が広く、大変多くのエネルギーを使用します。
大空間空調を例にした説明も是非ご確認ください。
省エネ導入をご検討の方へ
大空間用の空調換気設備の省エネを、空調換気設備の更新工事無しで提案をしております。 大空間用の省エネシステムを導入で、どこよりも早い投資回収が可能かもしれません。 お気軽にお問い合せください。
空調の電気代高騰の原因と省エネ技術
空調の電気代が高騰傾向の原因
空調の省エネを検討・計画する前に、一度空調機のエネルギー費用に関係する推移を確認していきましょう。
空調機の主なエネルギーは電気になります。
電気代は近年上がる一方になっております。
電気代が高くなり、経営で苦しめられている企業も多いはずです。
実際に空調機における電気代の増加の原因は、一般的には下記の2つが挙げられます。
① 電気料金そのもの値上げ
下の表からは、2010年から2019年にかけて産業用の電気料金は25%も上昇しております。
2010年の13.7円/kWhから2019年の17.0円/kWhの変化を、オフィスビルの電気使用量が1630kWhの条件で試算してみると、
①2010年
13.7円/kWh×1630kWh=22,331円
②2019年
17.0円/kWh×1630kWh=27,710円
差額で5,379円が出てきます。こちらが使用量や年月が積み重なると大きな差額となってきます。
電気代の高騰の原因の一つとしては、火力発電の際に必要な燃料の輸入価格の上昇が考えられます。今後も燃料の輸入価格が上がれば、電気代も共に上がっていく可能性は十分に考えられます。
特に設備機器の多い施設・工場は、更なる電気代の高騰も予め予測していくことが大切になります。
電気料金が高くなり続けている為、温度管理が重要な空間や空間が大きい場所では、使用すればするほど今後も高くなっていくと予想されます。
② 地球温暖化により外気温の上昇
また日本の年平均気温に関しては、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.28℃の割合で上昇しています。特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。(引用元:気象庁HP「日本の年平均気温偏差の経年変化」)
夏場において空調機は、より高い外気を冷やす方が運転時間も長くなり、エネルギーをより多く使用します。
このように電気代高騰以外にも、夏場においても外気温を冷やす負荷が高まっており、そちらも電気代が上がってしまう一つの原因となっております。
先程の電気使用量の試算では、同じ使用量で計算していましたが、実際には使用量自体が増えている場合が考えられます。
空調設備は生産設備と違い、電気使用量を増えても直接利益には結び付かない機器になります。きちんと空調はされているが、導入コストもランニングコストも比較的少なくすませることが理想です。如何に空調設備の電気使用量を抑え、経費を抑えるかが大切になります。
写真出典:発受電月報、各電力会社決算資料を基に作成原油CIF価格:輸入額に輸送料、保険料等を加えた貿易取引の価格
空調機メーカーの省エネ技術
空調機の電気代を削減するには、省エネが大切になります。
省エネには様々な方法がありますが、空調機の省エネも年々良くなっております。
空調機を最新の機種に更新するだけでも、省エネ効果が見られる場合もあります。
人の状況や温度を見極めて風を送る高性能の省エネ空調機も出てきております。
昨今ではAPF値が省エネの基準となる指数にもなってきております。
従来まではCOPという指標に基づいて考えられておりました。
COPもAPFも共に空調機の運転効率を示す指標になっております。
COPとは定格冷房・定格暖房時の消費電力1kW当たりの冷房・暖房能力を示したものになります。
COP=定格能力(kW)÷定格消費電力(kW)
で求められます。
しかし、こちらのCOPはある一定の温度条件での指標であり、それに対してAPFは年間を通した能力と消費電力で計算する為、実際により近い運転効率を示すことができます。
APFは1年を通して、一定条件のもと空調を使用した場合の消費電力1kWh当たりの冷房・暖房能力を示したものになります。
APF=1年間冷暖房で発揮した能力(kWh)÷1年間冷暖房の消費電力(kWh)
で求められます。
APFもCOPも共に数値が大きいほど、効率の良い空調機となります。
より高い省エネ性能を求められる方は、参考値としてご確認ください。
また補助金の対象機種の基準となることもありますので、注意が必要です。
エアコン(空調機)本体自体は、どのメーカーも最新機種ほど省エネ性が高まってきております。既存の空調機が大変古い場合には、空調機を更新するだけでも、省エネ効果をもたらす場合があります。
記事:企業が行う省エネメリットと補助金とは
画像引用元:独立行政法人中小企業基盤整備機構HP「空調機の性能表示のCOPとAPFの違いは?」
空調の設定温度の変更と省エネ計算
空調の設定温度の変更と省エネ計算
環境省の「温室効果ガス排出削減等指針」によれば、一般的に冷暖房温度を1℃緩和することで、熱源設備で消費されるエネルギーは約10%削減できると言われております。
過剰な冷暖房の設定温度を利用者の快適性を損なわない範囲で緩和し、CO2排出の削減を図ることを目的としています。
【概要】
建築物における衛生的環境の確保に関する法律、及び、労働安全衛生法における温度基準の範囲内(17℃以上28℃以下)の室温となるよう冷暖房機の設定温度を見直すとともに、設備運転のこまめな調整を継続的に行う
推奨の室温としては、夏期28℃、冬期20℃とされております。
しかし室温=エアコンの設定温度ではないので、注意が必要です。
設置環境や周辺環境によっては、28℃の設定にしても必ずしも28℃にならない場合があります。正確に室温を28℃に保ちたい場合は、別途温度計を準備して確認しながら温度設定を行うことが大切です。
特に人が常時滞在していない共有部等の積極的な検討が勧められています。
無理のない範囲で取り組むことを是非ご検討してみてください。
引用元:環境省HP「〜エアコンの使い方について〜」
空調更新時の省エネ計算手順(導入効果)
空調機を更新する際に、ランニングコスト(運転コスト)を考慮し高効率空調機を検討される方は多くいらっしゃいます。
実際に、商業施設やビル、病院等の省エネ化は推奨されており、それに伴い補助金も多く活用されています。
その際に補助金の前提条件として、現在の空調機よりも省エネ効果が高い空調機に入れ替えることが掲げられています。
省エネ効果が高いとは一定の条件を満たした空調機、高効率空調設備とも言われ、各メーカーが様々なタイプを取り揃えています。
昨今の電気代高騰に伴い、導入コストに加え、ランニングコストも慎重に検討すべく要素となっております。
ではランニングコストをどのように比較して、どのくらいの効果を得られるかの計算手順を紹介致します。
①まずは年間でどのくらいの電気消費量があるのか確認する必要があります。
ポイントは空調機のみの電気使用量を確認することです。施設や建物によっては照明や産業機器等様々な用途で電気が使用されています。
その中で空調機を高効率空調設備に更新したことで得られるメリットを正確に測定するには、空調機のみの電気使用量が重要になります。
どうしても確認ができない場合は、過去の履歴や同じ用途の施設の電気代を参考にする、実際に測定を行う必要があります。
②続いては高効率の空調機の想定される電気使用量を計算していきます。
消費電力と稼働率、1日の使用時間を確認していくことで計算することができます。
③最後に現在の電気使用量と、更新後に想定される電気使用量の差異が高効率空調機を導入して得られる削減できるメリットになります。
重要なのは1年間分を合算した数値での差異を出すことです。季節によって空調機の稼働率は変わってきますので、1年間単位で計算することで季節による環境の差を加味した計算を行うことができます。
また削減できる電気消費量に電気単価をを掛けることで、削減のコストメリットも具体的に把握することができます。
こちらの計算の仕方からわかるように、空調の使用時間が長い場所や空調の稼働率が高い場所はより効果が得られる可能性が高いことがわかります。
高効率空調設備を補助金ありきで導入した結果、思った効果が得られなかったということがないよう是非事前に試算いただくことをお勧め致します。
空調の省エネ対策・方法と大空間空調
空調における具体的な省エネ対策
続いて、実際の省エネの方法を確認していきましょう。
建築・設備の基本的な省エネ計画の考え方は、
①建物自体の熱負荷を軽減すること
②自然を活用すること
③性能の高い設備システムを構築すること
④適正に運転管理をすること
になります。
①と②は主に建築側、③と④は主に設備側の計画と運転管理からの見直しが必要になります。
省エネを考える際は、建築と設備の両面から考えなければなりません。
建築側での対策としては、風除室の設置や、屋上壁面緑化、屋上散水、ガラスの断熱性の向上、日射の遮蔽、気密性の高さ等が考えられます。
設備側でできる省エネの対策は以下の通りです。
抜粋してご紹介している為、詳細はお問い合せください。
①全熱交換器
換気による捨てられる空気と、室内に送り込む外気の間で熱回収を行い、外気による空調負荷を軽減させる方法です。お手洗いや厨房等では使用できない為、注意が必要です。
②取入れ外気量の制御
外気取入れ量を制御により減少させることで、空調負荷を軽減させることができます。
例えば、二酸化炭素濃度や人の在室の有無によって、不必要な場合には外気を取り入れないシステムの導入することもできます。
③外気冷房
室内よりも外気温の方が低い場合、外気を利用して室温を下げる方法です。
④コージェネレーション
コージェネレーションシステムは、燃料でエンジンなどの原動機により発電し、同時に発生する排熱を利用して蒸気供給、温水供給、冷水供給を行うものです。
⑤省エネ性能の高い空調機に更新する
同じ能力の空調機に入れ替えていても、前述したとおり、空調機本体の省エネ性能は毎年優れてきている為、更新しただけでも省エネ効果が見込める場合があります。更新前後の空調機の能力次第で、効果は大幅に変わってきてしまいますので、一度省エネ試算が必要となります。
他にもファンやポンプ関連の無駄なエネルギー消費を抑える、各設備の設定を変更することでも省エネを図ることができます。
記事:映画館の空調制御システムとは</a>
記事:全熱交換器の基礎知識|メリットと仕組み
記事:コージェネレーションとは|排熱から発電を!
記事:カーボンニュートラルから考えるバイオガス発電の未来
【例】大空間空調における省エネ対策
大空間空調とは、天井の高さが高い大きな空間(容積)における空調を言います。こちらの大空間における空調は、空間が大きい為に空調すべき容積が大きい点、暖気は空間上部に溜まりやすく、冬場は下の方が暖まりにくい点により比較的エネルギーを多く使う傾向があります。またそのような空間は商業施設や体育館、アミューズメント施設に多く、営業時間が長い、在室人数が多くなりがちな点も、空調のエネルギーを多く使用する要因にもなっております。
このような場所では、下記のような対策が考えられます。
・人の在室人数に応じた省エネシステムの導入
人がいないタイミングで空調を止めたり、必要最低限の換気量に抑えることで、省エネを図ることができます。
・温度成層空調システムの導入
先ほどの空気の温度によって、空間の上に行きやすい空気と下にいきやすい空気に分かれます。その空気の動きを利用した空調システムにより省エネを図ることができます。
まとめ
電気代が上がっている今、省エネを無視できない存在になってきています。
建築や設備など多角的に見直すことができ、検討の幅も広いです。
省エネシステムを導入したほうが良いのか、それとも設備運用の見直しが必要なのか、
エネルギーの無駄がないのかを見直すことが重要になってきます。
私達の生活で必ず電気を使用しており、時間経過とともにエネルギー費は積みあがっていきます。省エネ対策はお早目にご検討いただくことも重要です。
省エネでお困りでしたら、是非お問い合わせからご相談ください。
省エネ導入をご検討の方へ
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普段は換気・全熱交換器に関わる工事、他には劇場関係の空調換気設備の修繕・保守を担当しております。
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●菱熱工業株式会社 社員
●開発商品(全熱交換器)の新聞社掲載情報(日本経済新聞社、月間HACCP、日刊工業新聞社)
●主な仕事内容:空調更新工事・保守メンテナンス・換気改善提案
●設備工事の妥当性を見極めるには、ある程度の設備知識が必要です。そんな知識を提供してより良い設備の保守・工事のご参考にしていただけますと幸いです。