植物工場の種類と仕組み|メリット・デメリット

今回は植物工場の種類と仕組み、メリット・デメリットについて解説したいと思います。
植物工場と一口にいっても様々なタイプの工場があります。
大きく分けると、完全人工光型と太陽光利用型の2つに分類されます。それぞれの特徴をチェックしてみましょう。

 

植物工場とは

植物工場とは植物を生育する為の環境(温湿度・光・二酸化炭素・水・栄養)を管理された環境で安定的な野菜の栽培を行う工場です。
その環境は、光、水、温度、栄養など植物の成長に必要な要素を人間が完全にコントロールできる状態です。
現時点では葉物が多く育てられており、根菜類の栽培が難しいと言われています。また土の代わりに培養液が用いられることも多いです。
植物工場の設備には、生育する環境を維持する為の温度を維持する為の空調設備、生育に必要な光源の照明設備、二酸化炭素等を供給し循環させる換気設備、培養液循環させるためのポンプ設備、他にも棚等の栽培設備や消毒設備等があります。

植物工場の最大のメリットは、天候に左右されず安定的に栽培できる点です。昨今では雨天の日が少なく野菜が大きく育たない、雨天の日が続き野菜が病気にかかってしまう等の天候次第では収穫物に影響がでてしまいます。また収穫状況によってスーパーに並ぶ野菜の価格が高騰することも稀ではなくなってきています。植物工場では、雨天が多い少ない、台風の影響、病気の影響を受けることなく栽培することができます。そのため一年を通して同じような品質の作物を生産することが可能となります。さらに、貴重な水資源の節約にも寄与するとともに、食糧問題や環境問題の解決に向けての一助になる可能性を有しています。
もう一つのメリットとしては、建物内などの密閉空間で栽培することで露地栽培の野菜と比較して、菌数を抑えることが可能と言われています。実際に野菜を可能する前に野菜を何度も洗う等、厳しい衛生管理が行われています。野菜を洗う水の量や殺菌液の使用量も多く、菌数が少ない野菜を提供できることは重要な観点となっています。

植物工場のデメリットは通常の露地栽培にはない光熱費がかかることです。安定的に栽培する為の設備が多く設置されており、そちらのランニングコストとして電気代や水道代が発生してしまいます。
こちらは設計時に省エネシステムを導入できているかが重要になります。

植物工場の仕組み

植物工場では、一般的に人工光を用いた栽培が実施されます。LEDライトを活用し、光照射、照射時間、光質を調整することで、植物の最適な成長環境を整えます。また、農作物が生育するために必要な水分と養分を、必要量だけ効率的に供給します。そして、害虫の侵入を防ぐための完全密閉空間を確保し、品質と衛生状態を維持します。これらを通じて、植物工場は安定した品質の農作物を生産し続けることが可能となります。

植物工場と従来的な農業の違い

植物工場と従来的な農業との最大の違いは、環境要素を完全に人間がコントロールできることです。天候や季節、病害虫など、外的要因の影響を最小限に抑え、一年中、均一な品質の農作物を生産できる点が大きな特長です。また、植物工場では従来農業よりも水消費量が少なく、貴重な水資源を節約できます。さらに、化学肥料や農薬の使用量も削減でき、環境負荷の低減も図ることができます。
従来の農業に比べ、品質や生産量のコントロールが容易であることはもちろん、天候に左右されない安定した生産が可能な点が植物工場の最大の魅力と言えるでしょう。

植物工場におけるメリット

①高品質な収穫物

植物工場の最大のメリットといえば、何と言っても高品質な野菜が安定して収穫できる点でしょう。従来の農業では天候に左右され、荒天や気候変動により収穫量や品質が変動することも珍しくありません。一方、植物工場では栽培環境が厳密にコントロールされているため、風雨や季節の影響を受けることなく、安定した品質の純度が維持されます。

②コストと効率性

植物工場では、ライトや温度など成長に最適な条件を実現することで、従来の農業で起こり得る無駄なエネルギー消費を抑制できます。また、栽培スペースを最大限に活用するため、限られた土地でより多くの野菜を生産することが可能です。そのため、植物工場を利用することにより収穫量を増加させることができます。これらの要素が融合して、コスト削減と生産効率の向上が期待できます。

③状況に応じた種類の選択

植物工場では、環境条件を細かく管理することができるため、状況に応じて作物の種類を選択することができます。例えば、特定の季節だけに生育する作物でも、植物工場ではその季節を人工的に作り出すことができるため、季節に縛られずに様々な種類の作物を栽培することができます。

④人工光での栽培

近年の技術革新により、植物工場における人工光を用いた栽培方法が注目を浴びています。
一般的に、人工光での栽培にはLEDライトがよく用いられます。LEDライトは消費電力が少なく、長寿命であるため、環境負荷が低く、経済的です。また、LEDライトによる人工光照射は、光の量や波長、照射時間などを植物の種類や育てる環境に応じて調整できるため、植物の生育速度を調整したり、栄養価を高めるといったことも可能になります。さらに、植物に必要な光質を照射できるフルスペクトラムLEDなど、より効果的な光源も開発されてきています。
自然の光を必要とする植物たちを、人工光により照らし出すことで、自然環境に依存せずに、各種の植物を栽培することが可能となりました。これにより、天候や日照時間に左右されず、夜間や災害時でも作物の生育を安定させることができます。また、季節を問わず同じ品質の作物を収穫することができますので、産地や時期を選ばずに安定的に農作物を供給できるのです。これは食糧問題や災害時の食料確保など、社会問題解決にも寄与する可能性を秘めています。

植物工場の種類

完全人工光型植物工場とは

完全人工光型植物工場は、野菜の光合成の光源として人工光を活用します。人工光としては近年ではほとんどの工場でLEDが採用されています。
また、外界の影響を受けないように閉鎖された環境で野菜を栽培します。

完全人工光植物工場のメリットは、天候に左右されないため季節に関係なく収量を高め、なおかつ安定的に生産することができる点です。
設置場所にもほとんど制限がありません。また、閉鎖環境で栽培するため、野菜に虫が付着することを防止できます。
とくに虫など異物混入の影響が大きい業務加工用の野菜にとっては大きなメリットとなります。
さらに、閉鎖された施設内では衛生的に管理することが比較的容易になります。

完全人工光植物工場のデメリットは、閉鎖された環境を作るためにしっかりとした建屋を建設する必要がありイニシャルコストが高くなる点があげられます。
また、光合成のために使用するLEDの電気代などのランニングコストも割高となってしまいます。

太陽光利用型植物工場とは

太陽光利用型植物工場はビニールハウスやガラスハウスの中で野菜を栽培します。
ビニールハウスやガラスハウスを透過した太陽光を利用して光合成を行います。

完全人工光型と比較したときのメリットは、イニシャルコスト、ランニングコストの低減です。
自然光を利用するため、光源に電気代がかからず、光熱費を低く抑えることができます。
また、太陽光は様々な波長域をふくむため、様々な品種の野菜を栽培することに向いています。

一方、デメリットとしては生産が安定しない点があげられます。
完全人工光型植物工場のように完全に閉鎖された環境をつくることは難しいため天候など外界の影響を受けることになります。
太陽光を活用するため、日照不足が続くと当然生産量が少なくなります。
また気温の上下によっても生育が早くなったり遅くなったりするため生産量を安定させることが難しくなります。
工場管理者の技量についても高いものが求められます。
また、完全に閉鎖された環境ではないため、虫など異物混入を完全に塞ぐことが難しくなります。

今では自然光と人工光のハイブリット型の植物工場も出てきています。そちらも是非チェックしてみてください。

まとめ

今回は、完全人工光型植物工場と太陽光利用型植物工場の特徴についてまとめました。
いろんな品種を栽培したい、レベルの高い衛生管理下で野菜を生産したい、とにかくコストを抑えたい、虫などの異物混入を防止したい、農業経験者でなくても運営できる工場が良いなど、もとめる野菜の品質、事業の目的は様々だと思います。
その目的に適した栽培方式を選択する必要があります。

・植物工場の新技術と将来展望

最先端のAI技術を活用した成長予測や収穫の最適化、IoTを使った遠隔管理など、いかに効率よく生産を行い、質の高い野菜を消費者に提供するかに焦点が当てられています。これからの植物工場では、さらに精密な管理が求められ、データ科学との融合が進むでしょう。